ブラッディ アリス
Ⅶ
「昔は…あなた達家族に見苦しい所を見せてしまったわね…」
シャルル夫人の瞳の奥に描かれる、長い長い過去の日々…。
ラソエラ家に代々伝わる家宝は、遠い昔に魔術師によって作られた一枚の鏡。
その鏡には魔導師が宿り、問いかけをすればどんな質問にも真実を答えてくれた。
親が強引に決めた結婚を仕方なく受けたシャルルは、その代わりに親から家宝を譲り受け…ベルアベスタに嫁いだ。
「あの鏡を私によこせ!」
鏡の存在を知っていたベルアベスタ侯爵は、ことごとく鏡を奪おうとするが…。
「あれはラソエラの者にしか答えません」
シャルルは断固として渡そうとしなかった。
ある晩、シャルルが不在の隙を見て鏡に問いかけをした侯爵だったが…シャルルの言うとおり鏡は何も答えない。
だが…。
「鏡よ…なんでもいい…。お前の望む物を捧げる…。だから私にも答えてくれ」
侯爵が思わず発したその言葉に、鏡は反応を示した。
「本当か?ガガゼル・ベリシュ・ベルアベスタよ」
「あ…ああ!本当だ!」
鏡は自らの望みとして、「シャルルを愛し、シャルルとの間に子を生してほしい」と告げる。
侯爵はその言葉を受け、それから毎晩シャルルを抱くようになった。