ブラッディ アリス
アリスは微笑みを浮かべ、ザリチェから借りた懐中時計を見た。
思った以上に時間の流れは早く、正午まで…あと12分…。
「急いで、カイル。正午まで、本館に入らないと」
「その前に、そのパン…どうするの?食べるの?」
カイルは少し呆れた顔で、アリスがずっと握り締めていたパンを指差す。
「…あ…忘れてたわ…。食べようと思ったけど…」
パンはボロボロと道に落ち、落ちたパンを目当てに徐々に小鳥たちが集まってきている。
ザリチェが作ってくれたパンを、少し悲しそうに見つめるアリス…。
「これから戦闘になるかもしれないなら、乾いた物は極力食べない方がいい」
カイルはアリスの手からパンを取ると、歩きながらパンを細かく千切り始めた。
「…そうね…。鳥が食べてくれるみたいだし…」
まるで道しるべのように、一本道に続くパンの欠片…。
落ちたパンを啄ばむ小鳥たちは、汚れの知らない真っ白な羽根を嬉しそうに伸ばしていた。