ブラッディ アリス
「…アリス…アベル…?…」
純粋に生まれた時から村落で育ったノーカとクレスタは、王族にも貴族にも無縁な生活を送っていた。
自分の国以外の国の名前などわからない…世界的に有名なアリスやカイルの名を聞いてもピンとこない…。
『貴族』なんて出会ったのはラミア・ネネ・リトルメラ侯爵が初めてだったし、『王子』というのは絵本や小説の中だけの存在だと思っていた。
「…どういうことだよ…。なんでここにいるんだよ…?」
呆然とするクレスタ。
「……この施設には問題がある。…だからアリス様とカイル王子は身分を隠して、調べにきたんだ…」
タウティがそう言って、クレスタに優しく微笑みかける。
「…タウティとザリチェは…なんで知ってるんだ?……ずっと知ってたのか?」
「…………」
「お前らも…違うのか?……俺らと…違うのか…?」
そんなクレスタの疑問に顔を俯けるタウティとザリチェ。
「…ひ…ひどい!…騙してたの?!………ひどいよ…みんな…」
ノーカの瞳がだんだんと潤み、顔が赤くなっていく。