ブラッディ アリス
静まり返る寮舎内…。
オウルが記憶を辿りながら、静かに語り始める。
「…クレスタとノーカ…には申し訳ないですが、僕とファルコン、クロウも貴族です。そして…カナリィも貴族でした。約3年前までは…」
三年前…悲劇的な事故で亡くなってしまったカナリィの両親…。
残されたのは多額の借金と、たった一人の弟…ロビン…。
「…カナリィは当主の前妻との間の子でした…。結婚後すぐに子どもが授からなかったご両親は、2歳だったカナリィを前妻から引き取ったそうです。ですがその翌年、弟のロビンが生まれました…」
待ち望んでいた二人の間の子ども…、しかも男子…。
当たり前のように両親は、ロビンを次期当主として育てた。
「ロビンが生まれた以上、カナリィの存在は全く意味がなくなった…。だけど立場上、前妻の元に返すこともできず、そのままカナリィを育てていくしかなかった…」
もちろん『前妻の子』というのは、『後妻』にとっては不愉快な存在。
カナリィは色々な嫌がらせに耐えながら、必死に生きようとしていた。
「…僕たちは、二人をずっと見てきました。…本当に幼い頃から一緒にいましたから」
オウルは思い出し笑いをしたかと思えば、悲しそうな顔を見せる。