ブラッディ アリス
「まぁ…とりあえず…夫人が自ら志願したことで、ラソエラの遺産は侯爵のものにならなくて済むわね」
アリスはそのまま階段へ向かう。
「…アリス…私ね…処刑の前に、面前で全て真実を話そうと思ってるのよ…」
シャルル夫人はゆっくりと立ち上がり、濡れた瞳でアリスの背中を見つめた。
アリスはシャルル夫人の言葉に足を止め、振り返る。
「…もう遅いわ…。刑が確定してからの罪人の言葉なんて…」
「それでもいいのよ……もう私ができることなんて…それしか…ないから…」
涙を流しながら、シャルル夫人は不適な笑みを浮かべていた。
「…冥界に行ったら…きっと母様に怒られるわ。シャルル夫人」
「そうね…。…リナリアの言うこと…ちゃんと聞いとけば良かったわ…」
そう言いながら泣き崩れるシャルル夫人の声は、暗くて狭い地下牢に響く。
アリスはまた鼻歌を奏でながら、静かに地下牢を出て行った。