ブラッディ アリス



「……ど……して…」



怯えるカルサ。

太ももの上で、両手をぎゅっと握り締める。




「…まずカジノで、あなたからジャックのタバコの匂い。…その後、私はホテル内でジャックに接触した。……今回の件に深く関わる人物と、この国の貴族代表であるあなたが顔見知り…だなんて…」

「違うんだ!!…僕は…彼が何者かなんて何も知らなくて……ただ…定例会の数週間前に…声をかけられた…。『先代の病を治す代わりに、アベル公爵を招いてほしい』って…」


カルサはテーブルをバンッと両手で叩き、汗だくでアリスに訴えた。



「……なるほど…。……で…先代の病はどうなったの…?」

アリスは冷めた目つきでカルサに問いかける。

「…き…昨日……薬の入った小包が届いた…。…たぶん…ジャックから…。…ルナリア様に見てもらおうと思って…まだ使ってない…」

「……そう…」


アリスはスクッと立ち上がると、窓から外を眺めた。


「……時間がないの…。……誰にも内緒で、今すぐヘリを用意してくれたら、私も本当のことは黙っていてあげる。……今のところはね…」






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