ブラッディ アリス
支度をし、一階に下りた三人を待ち構えていたのは、満面の笑みを浮かべたキオネだった。
「おはようございますわ。朝食の用意はできております。私はこれからお父様と広場に行かなくてはなりませんの…。申し訳ないですが、後から来ていただけます?」
すでに考えてあったようなセリフを早口で言うと、キオネはすぐに家を出て行ってしまった。
「…へたくそな演技…」
アリスはニヤリと笑いながら、カイルとラビの顔を見る。
「処刑までに準備、しとかなきゃな」
ラビがアリスの肩をポンッと軽く叩いた。
朝食は処刑の直前ということもあり、パンと野菜とスープ。
肉類と魚類は無い。
「わかるわ…。人が死ぬのを見る前と後って、生き物が食べられないもの…」
「ふぅん…。アリスもかわいいとこあるんだね」
バカにしたようにカイルが鼻で笑う。
「死体とやる奴にはわかんないわよ。私はデリケートなの」
その様子を見ながら微笑むラビは、早々に食事を終わらせ、席を立つ。
「…どこ行くの?ラビ」
「ちょっと電話してくるよ。すぐ戻る」
そう言ってラビは部屋を出た。
「…誰に?」
パンをむしりながらカイルはアリスに尋ねたが、アリスは気にもしてない様子で首を少し横にかしげただけ。
「そんなに執事に無関心でいいのか?」
カイルの一言にアリスは何も返さず、静かにスープを飲み干した。