ブラッディ アリス
『烙印の儀式』とは、まだ異性を知らない少年少女の体に『リリス家の血』が混ざっていないかを調べる儀式である。
儀式を受けるかは任意であり、リリス家に莫大な寄付を必要とするため、儀式を望む者はほとんどいない。
そして…基本的に白魔術を使うとされるマリア家の血を引く者には、必要のない儀式とされている。
「……リナリアは……その時すでにお前を戦わせるつもりでいた…。……敵は誰なのかを…もうわかっているのだろう?」
コキアはクスクスと笑いながら、アリスの座るソファーの後ろへと回り込む。
「もちろんですわ」
コキアの細くて長い指が、アリスの輪郭を静かになぞる…。
「……その名を呼ぶのが恐いのか?……」
「………いいえ…」
アリスはコキアの手を嫌がるように払いのけ、立ち上がる。
「……ラマツは私が追放した後、すぐにあの国へ向かった…」
「…そうですの……。じゃあ…ドクター・ラマツの方が…彼らを動かしたのかしら…?」
アリスはクルッと振り返り、コキアと見つめ合う…。
「…いや…初めからお互いにお互いを利用しているんだ…。ラマツも目をつけていたし……奴等もな…。……それは…お前とあの執事も同じだろう…」