ブラッディ アリス
アリスはコキアから目を逸らし、フッと鼻で笑った。
「……今日の目的は……『過去の間』ですわ…。……もう一度見直したいの…。この戦いの…始まりを……」
目線を戻し、まっすぐにコキアの瞳を見るアリス。
「…わかっているよ…。…気の済むまで…部屋を使うといい…。……食事は用意させる…」
コキアは優しく微笑むと、カーネーションに合図を送る。
「……ご案内するわぁ。……城に移ってから『過去の間』も広くなったのよぉ」
カーネーションは嬉しそうにニヤリと笑って見せ、コツコツと歩き出した。
「…申し訳…ないですわ……」
「……気にしなくていい…。…頼ってくれて嬉しいよ…。…私は……アベル家が一番好きだ……」
悪魔と繋がりを持つリリス家の、当主とは思えないほど優しい顔をしたコキア。
そんな彼女が初めてだった。
リリス家の当主になり、「むやみに人を殺してはならない」と悪魔に謳ったのは…。