ブラッディ アリス
アリスの不適な笑みに何かを感じたラビは、ポケットから車のキーを出すと玄関へ向かった。
「カイル!」
「わかったよ…」
カイルはアリスの読んでいた新聞を持つと、仕方ないという様子で部屋を出た。
朝ということもあり、町の中はまだそんなに車がない。
だがベルアベスタ邸の周りには数台のマスコミの車が停まっている。
「私たちが出てくるの…待ってたみたいね」
「そりゃ…アリエス国王子とアベル家当主のセットなら…撮りたいだろ」
そう言ってラビは車のエンジンをかける。
その音に反応したマスコミが、待ち構えていたというようにシャッターを切る。
アリスは助手席、カイルは後部座席に乗り込むと、ラビは勢いよく発進させた。
「とばすよ?カイル」
「…ああ」
カイルの読んでいる新聞がバサバサと音をたてながら風を受け始める。
朝日の光を浴びて、輝き靡くアリスの髪。
「間に合うと…いいけど…」
遠くに見えるストレイズ神殿を見つめながら、アリスは呟いた。