ブラッディ アリス

神殿の中に入ると、慌ただしそうに駆け回る司祭たちが数人。

その中の一人を捕まえたアリスは問いただす。
「ベルアベスタ侯爵方は…どこにいらっしゃいますの?」

「あ…あの…」
見ず知らずのアリスに戸惑う女司祭。

「あなた…新人ね?シャリオ司教を出しなさいよ。話にならないわ」

それを聞いた女司祭は、アリスに怯えたように司教を呼びに行った。

「…もっと優しく聞けよ…」
カイルが呆れたように言う。


しばらくして三人の前に現れたのは、ストレイズ神殿を管理する司教パジッツ・シャリオ。
見た目はまだ20代後半…。
今日は処刑だということもあり、いつもより豪華な身なりだ。

「お久しぶりですね。アリス嬢」
司教はアリスを見るなり、優しく微笑みかけた。

「シャリオ司教…儀式の効果が続いてるみたいね…。まだ生きててくれて嬉しいわ」
アリスがにっこりと笑い返す。

「アリス様…司教とはお知り合いなんですか?」
ラビが不思議そうに司教を見つめる。

「言ってなかったかしら?司教はお父様と仲が良かったの。昔はよく一緒に遊んだわ」

アリスがそう言うと、シャリオ司教はラビに右手を差し出した。
「君がアリス嬢の執事ですか…。初めまして。パジッツ・シャリオと申します」
司教の差し出した右手にラビは右手を重ね、二人は握手を交わす。
「お若いのに司教…とは、もしや『不老の儀式』を行った者の一人…ですか?」

ラビは冷ややかな笑みを浮かべ、一瞬ぎゅっと司教の手を強く握った。



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