ブラッディ アリス
ラビの問いに動じもせず司教はにっこりと笑う。
「『不老の儀式』…それはわが身の寿命を大きく悪魔に捧げる代わり、儀式を受けた年齢から死ぬまで変わらずの姿で生きるという…リリス家との契約…」
後ろで聞いていたカイルがニヤリと笑い司教を見た。
「まさか我がアリエス国が誇るストレイズ神殿の司教様が、禁じられた儀式をやってなさったとはね…」
カイルの一言にアリスは舌打ちをする。
「ごちゃごちゃうるさいわよ、カイル。司教という立場には、リリス家の儀式が必要なの。わかるでしょう?」
「べつに駄目だとは言ってない…だろ?」
司教とは、神に近い者として選ばれる。
そのためには、何らかの奇怪な能力や性質が必要とされていた。
現にシャリオ司教以外にも『不老の儀式』を受け、「神に選ばれた日から、歳をとらなくなった」と言い、民衆を信仰させている者が幾人か存在する…。
そういう『儀式』を行えるのは、黒魔術と呼ばれる闇の魔術を代々受け継ぐ『リリス家』のみ。
悪魔と繋がりを持つと言われたリリス家は大昔、貴族でありながらも貴族界から追放された。
それから人々は自然と、リリス家と関わりを持つことを好ましく思わなくなったという。
それ故、リリス家の『儀式』を受けるなど論外。
国によっては『儀式』を受けた者は死刑と定めているところもある。