ブラッディ アリス
最初で最後の…リナリアの涙…。
…今でも忘れられない…。
「いかがなさいました?コキア様」
しばらく過去を思い返していたコキアの目の前には、いつの間にかワインの注がれたグラスが用意されていた。
「…リリ……すまないな…大丈夫だよ…。……アリスの様子はどうだった…?」
心配そうにコキアを見つめて、アマリリスはコクンと頷く。
「…何か迷いがあるようです…。…それから…アリス嬢の執事が…あれの両方を持っているよう…ですが…」
「懐中時計のことか?」
「……御意…」
アマリリスは横にいたラナンキュラスを見上げ、不安げな表情を見せる。
「…べつに怒ってなどいないよ…。…グレーテルと連絡を取っていたのは知っている…。…お前らなりに、秘密裏に動いていたようだけど……ね」
コキアはクスッと笑い、アマリリスの頭を軽く撫でた。
「……リリはアリスのそばにいておやり。……『アリスに協力しろ』と…リナリアに言われたからな…」