ブラッディ アリス

「客間で待ってて。そっちは頼んだわよ」

アリスはラビにそう言い残すと、司教の手を握り神殿の奥へと向かった。

「……」
二人の後ろ姿を見つめたまま立ち尽くすラビ。
「妬けちゃうね?ラビ。あの司教も…アリスがお気に入りみたいだし?」
カイルはからかうようにラビの耳元で囁く。
「…べつに僕は妬かないよ。カイルみたいに、あからさまには…ね」

そう言いながら、ラビはカイルを見てニヤリと笑った。




「あの二人、アリスのこと気に入ってるみたい…だね」
シャルル夫人のもとへ向かう途中、シャリオ司教はクスクスと笑いながら言った。
アリスは微妙な表情で「ふぅ」とため息をつく。
「ちょっと気づかれたかもしれないわ…。私…司教と久しぶりに会えたのが嬉しくて…思わず喜んじゃったし…」
「二人の時は、前みたいに呼んでくれて構わないよ…アリス」
「…前みたく…パズって…?……無理よ」
アリスはらしくない顔をして、照れたように俯く。
「…あの二人のどっちが今の恋人なの?」
「え?」
司教の問いかけに、思わずアリスは顔をあげた。
「こ…恋人なんかじゃない…。ラビは執事で、カイルは親友。それだけ…」
「じゃあ、恋人の座は空席なんだね」
司教はアリスの手をぎゅっと握る。
「…だから…無理よ。私たち、もう終わったんだからっ」
「また始めからやり直せばいい」
司教は足を止めると、アリスを自分の体に引き寄せた。


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