ブラッディ アリス

「ちょっと…!離して!誰かに見つかったら…」
慌てて体を離そうとするアリス。
「もうこっちには誰も来ない。そんなに焦らなくていいよ。アリス」
赤面するアリスの顔を、優しい表情で見つめる司教。

「…パズ…」





「アリスの元恋人は、パジッツという男だ…って、前にナナリが言ってたよ」
客間の前に着くと、ふいにラビが呟いた。
「…ふーん…。恋人がいたってのは、アリス本人から聞いたことあるけど…あの男なのか…」
カイルは不満そうな顔をしながら客間の扉を開けた。

「あれ?」
客間には司祭が一人、掃除をしている最中だった。
ベルアベスタ侯爵とキオネの姿は無い。
「…失礼ですが、ベルアベスタ侯爵は…?」
ラビは司祭に近づき、周りを見渡しながら尋ねる。

「侯爵様と、キオネ様なら…たぶん…シャルル様の所だと思いますが…」

その言葉を聞き、同時に顔を見合わせるラビとカイル。
そして二人は勢いよく来た道を戻る。

「たしか…アリスが前言ってたよ。『すごく好きだった恋人がいたけど、真っ黒で真っ白な猫に奪われたんだ』って」
廊下を走りながらカイルは思い出したように言った。
「『真っ黒で真っ白』か…。それが白雪姫だとしたら…」
ラビの長い髪が靡く。
「昨日アリスが言ってた…『あの子は昔から私のものを欲しがった』…って…」


どんどん加速していく二人は、だんだんアリスに近づいていく…。










< 61 / 657 >

この作品をシェア

pagetop