ブラッディ アリス
「…アリス…?」
一瞬切ない表情を見せたアリスに戸惑うカイル。
「……仕方ないものね。こんな家に生まれたんだから。…私だって、結婚相手は自由に選べない…。……だから結婚なんて…どうでもいい…。……自分のやるべきことを…クリアしていくだけ…」
綺麗に磨かれた銀のスプーンに映るのは…見失ってはいけない『たった一人の自分』。
「…な…なんかごめん…ホントに…。…さっきは取り乱しちゃって…」
カイルは強い眼差しのアリスを見つめ、思わずそう言葉にしていた。
「……言ったでしょ?…いつものことよ。……あなたと私は唯一無二の『親友』なの。お互い迷惑もかけるし、利用したりもする…。もちろん甘えることもあるし、突き放すことだってあるわ」
アリスは優しく微笑んで、チラッとキッチンの方を確認した。
「……ありがとう…。……アリス…」
先ほどの狂気に満ちていた姿とは違い、穏やかに微笑むカイル…。
そんなカイルに、アリスは小さく四つに折りたたんだ白い紙をさりげなく手渡す。
「………?…」
カイルはアリスと目を合わせ、静かに紙を開いた。
…とうとう始まる。
アベル家とカイン家の…存続をかけた最後のゲーム…。
お母様に導かれた彼は…きっとカイン家との繋がりがある。
とりあえずは…エンジェルローズコンテスト…。
そこが第一のステージみたい…。
私は負けない。
絶対に。
だから…カイル…
たった一人の『親友』として
最後まで見守っていて。
どこにも行かないで…。
もうすでにナナリの心は…
…奪われてしまった…。