ブラッディ アリス
「『エンジェルローズコンテスト』って…今年が101回目なんですね」
休日の昼下がり、アベル邸のある一室にて、大きなテーブルの上にたくさんの書類を広げる…執事ラビット。
「そう…知らなかったの?…会場提供は、最初にコンテストを企画開催し…その第一回目のコンテスト以降、世間から姿を消していた…メイフリーク伯爵家」
同室の真ん中では、当主アリスが優雅にエステティックを受けている。
「100回目なんだと思っていました…。…貴族のお嬢様に料理もさせるんですね……」
「…ねー…。私も初めてだから…わからないことが多いのよね…」
『エンジェルローズコンテスト』とは…貴族である15歳から19歳の少女を対象に行われる、一年に一回の大イベントである。
子爵家から公爵家まで参加申し込みができ、第一次書類選考、第二次映像選考、そして最終実技選考を経て最優秀賞を獲得した少女が、いろいろな場で活躍する権利と多額の賞金を得ることができる。
ちなみに、最終選考に参加するのは12名。
その面々は前もって参加者に告知される。
「…公爵家…で、最終まで残ったのは…アリス様が初めてなんですね…」
参加者のデータをまとめた書類には、『公爵家が初めて最終選考に参加!しかもすでに当主であるお方!』と書かれている…。
「…何その書き方って感じよね…。…今までうちとラピスラズリ家以外の公爵家はみんな受けたことがあるみたいなんだけど、最終までは残れなかったみたい…。まぁ…侯爵家以下のお嬢様方みたいに、アカデミーに行って…お茶会に出て…みたいな、平和ボケした教育は受けてないし…。同じ目線で審査されてもね…」
「…では…なぜ…アリス様は最終まで通ったのでしょう?」
「……ふん。知らないわ。…母様が裏で何かしたんじゃない?…正直べつに出たくないのよ。そんなくだらないの」
顔をマッサージされながらブツブツと文句を言うアリスを見て、ラビはクスクスと笑った。
「…と言いつつも…、一ヵ月後のコンテストのために…エステを受ける回数が増えてますよね。アリス様?」
「……うるさいわね…。…出るからにはトップにならないと……貴族界の…ゾディアックの恥だもの…!」