ブラッディ アリス
最終実技選考は、立候補した貴族が会場提供を施し行われる。
期間は二週間で、参加者は親族や召使らと共に会場に寝泊りをする。
審査対象実技種目は第一回目から変わらず…「マナー」「料理」「特技」「ローズアート」「学問」「ファッション」であるという。
「料理……料理……。……アリス様…作れるのですか?」
ラビは種目を見つめながら眉間にしわをよせた。
「…大丈夫よ。ラビ…料理得意じゃない?」
上半身をオイルで輝かせたアリスが余裕の笑みを見せる。
「…作るのは私じゃない…ですよね?」
「そうよ。これから私が覚えるの。何がいいかしらー?薔薇を使ったものにしたいのよね」
「………はぁ…」
器用なせいなのか…なんでも簡単にできると思っているお嬢様に、執事は大きなため息をつく…。
「あと一ヶ月しかないんですよ?」
「あと一ヶ月もありますわ♪」
「………」
ラビの頭の中で『薔薇を使った料理』という言葉がグルグルと回り始める。
「…マナー…ファッション…学問……は…いいとして、特技はどうなさるんですか?なんでも良いみたいですが…」
「…特技はね、公爵家に生まれた人間だということを見せようと思ってるわ…。ぬくぬくと温室で育ったお嬢様には縁遠いもの」
「…何を見せるつもりですか…?」
アリスは真剣な眼差しで、天井のシャンデリアを見つめた。
「『射撃』よ」