ブラッディ アリス
Ⅱ
そして…一ヶ月後…。
アリスとラビはカイルから自家用ジェットを借り、ウィルゴ国へと飛んだ。
雲ひとつない晴天。
澄み切った風。
むせ返るほどの薔薇の匂い。
「…いらっしゃったわ…!…ヴァイオリア家の車よ…!」
「……アリス…アベル公爵…」
…コンテスト開催日の前日…。
百年ぶりにその門を開いた『メイフリーク伯爵邸』には、ぞくぞくとメディア関係の人間が集まっていた。
…パシャパシャ…パシャ…!…
アリスが乗った高級車が敷地内に入った瞬間、夢中でシャッターを切るカメラマンたち…。
「…まぁまぁまぁ……仕事熱心ですわね…。…こんなのが二週間も続くなんて…うんざりしますわ…」
憂鬱そうにため息をつくアリス…。
「…ふふ…ずっとメディアとは無縁だったものね…アリスは」
空港でアリスを出迎え、ここまで車を出してくれたイザベラがクスクスと笑った。