ブラッディ アリス
「…どのような方ですの…?…ゲルニカ…メイフリーク伯爵…」
自然とイザベラの横に並び、同じ歩幅で歩くアリス。
あからさまにタイプが違っていても、並べば誰もが目で追ってしまうほど絵になる二人の公爵家当主…。
「アリスが感じたままだと思うわよ?…私に挨拶してきたのは一年前くらいだったかしら…。なぜかウィッシュ様と現れてね…。…突然、『来年のコンテスト会場はメイフリーク邸で』と言い出したのよ」
「…ウ…ウィッシュ様と?!」
驚きのあまり、アリスの声が大きくなる。
「…しっ!……ね?びっくりするでしょ?…普通は逆よねー…。私が伯爵を連れて挨拶に行くのが筋なのに…」
「……どうして…ですの…?……なんか変…」
「定期的にメイフリーク家には調査員とか送ってて、ベル鳴らしたりもしてたけど…まったく連絡つかなくて…。でもアダム家には連絡してたのね…って…なんかガッカリ…。まるで私の管理がなってないって言われたみたいで…誰にも言えなかったのよねー…このこと…」
イザベラは悲しそうな笑みを浮かべて、ふぅとため息をついた。
本来の貴族界の慣習としては…有り得ない。
通常であれば、貴族は何事も自国の貴族代表公爵家に報告・連絡・相談をするべきである。
ただ今回の場合、取り次いだ相手が貴族界のトップ…アダム公爵だったため、イザベラは成す術がなかった…。
「…イザベラ様……その後は…」
「なぁんにもしてないわ。アダム家を敵にまわしたくないもの…」
イザベラの横顔を見つめ、アリスの胸はぎゅっと掴まれたような苦しさを感じた。