ブラッディ アリス


「…どのような方ですの…?…ゲルニカ…メイフリーク伯爵…」

自然とイザベラの横に並び、同じ歩幅で歩くアリス。

あからさまにタイプが違っていても、並べば誰もが目で追ってしまうほど絵になる二人の公爵家当主…。

「アリスが感じたままだと思うわよ?…私に挨拶してきたのは一年前くらいだったかしら…。なぜかウィッシュ様と現れてね…。…突然、『来年のコンテスト会場はメイフリーク邸で』と言い出したのよ」

「…ウ…ウィッシュ様と?!」

驚きのあまり、アリスの声が大きくなる。

「…しっ!……ね?びっくりするでしょ?…普通は逆よねー…。私が伯爵を連れて挨拶に行くのが筋なのに…」

「……どうして…ですの…?……なんか変…」

「定期的にメイフリーク家には調査員とか送ってて、ベル鳴らしたりもしてたけど…まったく連絡つかなくて…。でもアダム家には連絡してたのね…って…なんかガッカリ…。まるで私の管理がなってないって言われたみたいで…誰にも言えなかったのよねー…このこと…」

イザベラは悲しそうな笑みを浮かべて、ふぅとため息をついた。


本来の貴族界の慣習としては…有り得ない。

通常であれば、貴族は何事も自国の貴族代表公爵家に報告・連絡・相談をするべきである。

ただ今回の場合、取り次いだ相手が貴族界のトップ…アダム公爵だったため、イザベラは成す術がなかった…。


「…イザベラ様……その後は…」

「なぁんにもしてないわ。アダム家を敵にまわしたくないもの…」


イザベラの横顔を見つめ、アリスの胸はぎゅっと掴まれたような苦しさを感じた。



< 649 / 657 >

この作品をシェア

pagetop