ブラッディ アリス
……バタンッ!……
「……あ、アミ?…明日からの、いらなくなったわ」
ケータイを片手に不機嫌そうな声で電話をするイザベラは、アリスの部屋を出た後、ゲルニカのもとへと向かった。
「…あの執事が全部やるんですって!…もーっ…せっかくアリスを好きにできると思ったのに…」
電話の相手はイザベラの右腕である執事のアミ。
イザベラの一言に対して、電話の向こうではアミの笑い声が聞こえる。
時に主従関係を超えた二人は、プライベートでは女友達のように仲が良い。
「……まぁいいわ…。あの執事のお手並み拝見といったところね。…ごめんねー…わざわざ残ってもらったのに…」
と、そのとき…イザベラは前方から黒いマントで全身を覆った人間が歩いてくるのに気が付いた。
……何者かしら…?
胸騒ぎを覚えたイザベラは、黒いマントの人物が通り過ぎるのを待ち、声を潜めてアミに語りかけた。
「ごめんね、アミ…。ええ…大丈夫。…調べてほしいことがあるの…」
…甘い……タバコのにおい…?
黒いマントの人物が通り過ぎた後には、甘い匂いが漂っている。
「……そうね…一人……こちらに向かわせて。…明らかに不審者がいるわ」