ブラッディ アリス
「…まぁ…見てればわかるわよ…」
アリスは視線を処刑台に戻すと、じっと司教を見つめていた。
「罪人よ、今ここで懺悔を許す。神に申すことはあるか」
司教は処刑台の上で大空を仰ぎ、シャルル夫人に問いかける。
…声が出ないって…わかってるくせに…。
アリスは心の中でそう呟き、司教を睨みつける。
司教の問いかけに、シャルル夫人は首を横に振った。
その様子を見ていたカイルが、アリスに尋ねる。
「あれ?昨日…ここで真実を証言するって言ってたんじゃ…」
「…私の予想通り、それは侯爵とキオネによって阻止されたわ」
アリスがため息をつく。
「直前に…発声できないよう…声帯を特殊な方法で手術…か」
「え?」
ラビの一言にアリスが不思議な顔をした。
「違った?」
「…いや…そうだと思うわ…。首に新しい傷跡があったし…」
「そんな手術を短時間でできる医者っているのか?この国に?」
カイルが信じられないと言うような顔をして、アリスに問いただす。
「知らないわよ!もう!…もしかしたら…リリス家の黒魔術かもしれな…」
アリスがそう言いかけた瞬間、三人の瞳には司教が下す受刑の合図が映った。