ブラッディ アリス
Ⅱ
アリスは自宅には戻らず、カイルの家の車に乗り隣町に向かった。
「ラビに内緒で良かったの?」
カイルが少し不安そうにアリスに尋ねる。
「いいのよ。たまにはいない方が…。それより…王家の車なんて使ったら目立つわよ?」
アリスが車の窓からチラチラと外を見る。
「でも王家のだからこそ、町に入り易いと思うよ。大富豪の公開処刑前日は監察も厳しくなってるでしょ。王家を代表して僕が来た…ってコトにすれば…」
「まぁ…ね」
アリエス国王家、第四子カイル。
幼い時から兄達と比べられ、いつしか心を歪ませてしまった。
物心つく頃から女性死体に性欲を現し始め…今では自ら殺人を犯し快楽を求める。
見兼ねた父王が無理やりカイルの妃にしたのは町で数番目の資産家ラッセルゲナの三女…シンデレラ。
彼女は母と姉二人に虐められ、町ではちょっとした有名人…「サンドリヨン(灰かぶり)」と呼ばれていた。
城をおくこの町に灰かぶりと呼ばれる娘がいるのは王としてもどうにかしたかったのだろう…。
そして自分の息子が死体愛好家だなんてバレてしまう前に…強引に結婚させたのだ。