ブラッディ アリス


「その命…灰となって…天に昇る…」


アリスはそう呟きながら、自分の両脇に立つラビとカイルの服をぎゅっと掴んだ。


「やっぱ…ただ人を殺るのと…処刑は…違うな…」
カイルが空に昇る黒い煙を見ながら、自分が殺めてきた女性の死の瞬間を思い出す。
「…そうだな…」
燃え盛る炎の中の人影を見ながら、ラビはアリスの手を握った。





それからしばらくの間、業火はシャルル夫人の体を焼き続けた。

それが終わる頃には、処刑場に集まった民衆も珍しいものを見て満足したというように、徐々に場内を去って行く…。


処刑終了の鐘が高らかに町に鳴り響き、司祭たちが後片付けの準備を進める。

アリスとラビとカイルは、とりあえず神殿の中へと戻ることにした。


「アベル公爵様ですね…?ベルアベスタ侯爵ご息女キオネ様からこちらをお預かりしました」
アリスを探していたらしい一人の司祭が、小走りで近づいてくる。

「え?侯爵方は…?」
「キオネ様のお体の具合が悪いということで…お屋敷に戻られました」

「……わかりました。わざわざありがとうございますわ」

アリスが司祭から手紙を受け取ると、司祭は軽く礼をして処刑場の方へ戻っていった。







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