ブラッディ アリス
ⅩⅡ
微かな異臭が漂うハルザンヌ…。
もう昼時ということもあり、町はたくさんの人で賑わっている。
「どうでもいいけど…屋敷のマスコミは消えたのかしらね?」
アリスは車の窓から外を眺めながら呟いた。
「まだいるんじゃないの?」
そんなカイルの予想はハズレ、昨日まで屋敷の庭や林に隠れたり門の前で張っていたマスコミは全ていなくなっていた。
「めずらしいわね…」
周りを見渡しながらアリスたちは屋敷に入っていく。
中に入るなり、待ち構えていたのはベルアベスタ侯爵だった。
「こ…侯爵…いかがなさいました…の?」
様子のおかしい侯爵に、アリスはゆっくりと近づく。
「…すまないな…。いろいろと…」
侯爵は暗い表情で、アリスたちを客間に案内した。
「…どうしても…アリスだけに話しておきたいことがあるのだが…」
…娘と同じ事を言う侯爵…。
「手短にお願いしますわ。私、キオネにあの森小屋に来てほしいと言われておりますの。ご存知でしょう?」
「………王子と執事には席を外していただきたい…。二人には先に昼食の用意をしてある」
明らかに緊張している侯爵の中では、もう段取りがついているように思えた。
「…ふぅ…わかりましたわ。せっかくご用意していただいた食事が冷めてしまったら勿体ないですものね。カイル王子…ラビ…席を外していただけるかしら?」
心配そうにアリスを見つめる二人。
それに対して「大丈夫」と言うように目で合図をするアリス。
「では…」
二人は渋々部屋を出て行く。
「さぁ、二人きりになりましたわ。お話って何ですの?」