ブラッディ アリス
「…全て…ですわ…」
ニヤリと笑うアリス。
焦りと怒りがこみ上げる侯爵は、思わずアリスの腕を掴み体を壁に押さえつけた。
「…はぁ…はぁ…ゾ…ゾディアックには…報告したのか…?」
呼吸を荒くしながらアリスに顔を近づける侯爵…。
アリスはじっと侯爵の瞳を見つめる。
「…報告するも何も、私自らがゾディアックのメンバーですもの。このくらいのこと、自分で処理いたしますわ」
「じゃあ…報告はしていないのだな…?」
少しほっとしたように、侯爵は腕を掴む手の力をゆるめた。
「ちょうど来週に集会がありますの。そのときに証拠とこの事についての書類をもって『処理結果』は提出いたします。…これで…ベルアベスタ家も終わりですわね。侯爵」
わざと挑発するように淡々と話すアリスは、冷静に侯爵の手を腕から離す。
「……な…んだって?」
「アリエス国内貴族の不祥事を始末するのは私の役目です。そしてその結果をゾディアックに報告するのも、アリエス国代表貴族アベル家当主の役目。それくらいご存知でしょう?」
「つまり結局は報告するってことか…?」
「もちろん」
口を開けたまま、またも迫ってきそうな侯爵に対し、アリスは首からさげていたケータイを開いた。