ブラッディ アリス
「ラ…ビ…ごほっごほっ…うっ…」
侯爵の手から離れたアリスは床に跪き咳き込んだ。
アリスの首には、くっきりと残る…侯爵の手の跡。
「大丈夫ですか?アリス様」
ラビがアリスに駆け寄る。
「…大丈夫よ…。危なく、拳銃を使うとこだった…。さすがラビね。ありがとう」
アリスは少しよろめきながらラビに掴まり立ち上がった。
「そのナイフ…」
ラビの持つ果物ナイフに目を向けたアリスは、それを手にとりニヤリと笑う。
「あぁ…厨房の方にお借りして、昨日ご用意したリンゴを切っていたんです」
「あら…じゃあ…準備が整ったのね?」
アリスはそう言うと、震えながら拳を握り自分を睨むベルアベスタ侯爵にナイフを差し出した。
「さぁ、侯爵。ここまできたら、このナイフで自決でもいたしましょうか?それとも…私を殺します?」
アリスの言葉に、ナイフを受け取る侯爵。
「まぁ、私を殺してしまえば、カイル王子の力であなたも死刑にされてしまうでしょうから…。どっち道、あなたはここで幕を閉じることになりますけれど」
侯爵は、受け取ったナイフを黙って見つめる。
「ふふ…。私はそろそろキオネ嬢のところに行かなくてはいけませんの…。もしも、私をお殺りになるなら…戻ってくるまでお待ちいただいてよろしいかしら?」
侯爵は、俯いたまま何も反応しない。
「それでは…失礼いたしますわ」
アリスはそんな侯爵を楽しそうに眺めながら、ラビと共に客間を後にした。