ブラッディ アリス


「…っ」

アリスは目線をキオネに戻す。

「…ふふ…」

黒い髪、白い肌、薔薇色の唇…。
黙っていれば人形のように綺麗な悪魔が不適に微笑む。

「その…首からさげたケータイ…。そこに私の秘密を隠しているのでしょう?」

「!」

椅子からゆっくりと立ち上がったキオネは、アリスの首にさげてあるケータイを持ち、首から外した。

「さっき…あなたたちの荷物を見せていただいたけど、カメラなんてどこにもありませんでしたわ…。当たり前ですわよね。ずっとあなたが肌身離さず持ち歩いていらっしゃったんだもの…」

キオネはそう言うと、アリスのケータイを真っ二つに折る。
そして部屋の隅にある洗面台に溜まった水の中に、それを落とした。

ボチャン…。

数滴の水が跳ね、ケータイが静かに沈んでゆく…。


「さぁ、これで…証拠隠滅…ですわ。まだゾディアックには報告なさってなかったのでしょう?ふふ…。報告するなら、もうしてますものね」

「どうして…そんな断言できるのよ…」

アリスは慌てることもなく、ただじっと洗面台を見つめる。

「ゾディアック…『アリエス国貴族代表』という立場でいらっしゃるあなたなら、自らの手でちゃんと処理をなさってから…証拠と結果を揃えて報告すると思いましたの…。あなたのお父様のように…ね」

キオネは的確な意見を堂々と答えた。

その言葉を聞いたアリスは、肩を小刻みに動かしながらクスクスと笑い出す。

「そうね…。そのとおりよ。どのみち結局…私が処理することになるんだから…」








< 83 / 657 >

この作品をシェア

pagetop