ブラッディ アリス
「…っ」
アリスは目線をキオネに戻す。
「…ふふ…」
黒い髪、白い肌、薔薇色の唇…。
黙っていれば人形のように綺麗な悪魔が不適に微笑む。
「その…首からさげたケータイ…。そこに私の秘密を隠しているのでしょう?」
「!」
椅子からゆっくりと立ち上がったキオネは、アリスの首にさげてあるケータイを持ち、首から外した。
「さっき…あなたたちの荷物を見せていただいたけど、カメラなんてどこにもありませんでしたわ…。当たり前ですわよね。ずっとあなたが肌身離さず持ち歩いていらっしゃったんだもの…」
キオネはそう言うと、アリスのケータイを真っ二つに折る。
そして部屋の隅にある洗面台に溜まった水の中に、それを落とした。
ボチャン…。
数滴の水が跳ね、ケータイが静かに沈んでゆく…。
「さぁ、これで…証拠隠滅…ですわ。まだゾディアックには報告なさってなかったのでしょう?ふふ…。報告するなら、もうしてますものね」
「どうして…そんな断言できるのよ…」
アリスは慌てることもなく、ただじっと洗面台を見つめる。
「ゾディアック…『アリエス国貴族代表』という立場でいらっしゃるあなたなら、自らの手でちゃんと処理をなさってから…証拠と結果を揃えて報告すると思いましたの…。あなたのお父様のように…ね」
キオネは的確な意見を堂々と答えた。
その言葉を聞いたアリスは、肩を小刻みに動かしながらクスクスと笑い出す。
「そうね…。そのとおりよ。どのみち結局…私が処理することになるんだから…」