ブラッディ アリス
「つまり…『自由にしてる』んじゃなくて、『手が出せない』のね」
アリスの中では、その洞窟に何があるのか知りたい…という好奇心がゆっくりと大きくなっていた。
「ははは。そうだよ。僕が死ねばあの洞窟はもう開かないしね」
優越感に笑うカイルが、どこか憎らしく思えるアリスだった…。
それから車は小高い丘になっている草原を1時間ほど走り抜け、隣町に続くゲートに到着。
案の定、検問している門番やら、通りたいと騒ぐ旅の商人やら住民やらで賑わっていた。
「やっぱりね…」
アリスはふぅとため息をついて足を組みかえる。
数分後、一人の警察官が車の窓ガラスをコンコンと軽く叩いた。
「王家の方ですね?どちらへ向かわれますか?」
「ハルザンヌ」
「申し訳ございません…。反対のコフ行きでしたらすぐお通しできるのですが…ハルザンヌ行きは少々お時間を頂きます」
「わかってる。いいよ」
「念のため身分証を見せていただけませんか?…そちらのお嬢様も…」
アリスとカイルはそれぞれ自分の身分証明書を見せた。
警察官はそれを確認すると、敬礼をして去って行った。
「まったく…なんでも身分証が必要な時代になってきちゃったわね…」