ブラッディ アリス
「ぐ…っ…う…」
侯爵の体が静かに床に倒れ、握り締められていた斧が手から離れた。
「……あ……」
カタン…。
拳銃もまた、震えた手から離れ、床に落ちる。
「…一発で心臓を撃ち抜くなんて…けっこう慣れてるんだ…」
先ほどとは雰囲気の違うカイルが、不適な笑みを浮かべながらゆっくりと侯爵の死体に近づく。
「ねぇ?ミス・キオネ」
「…や……っ…うぐ…!」
震えながら目を潤ませるキオネは、突然口を押さえしゃがみこむ。
「…順番的には…逆だったんだけど…」
その様子を冷静な顔で見つめながら、カイルの足は倒れた侯爵の体を踏みつけた。
「…?!」
キオネが苦しそうな顔で、カイルの信じられない行動に唖然とする。
「まぁ、こんなシナリオでもイイか。…狂った娘が、使用人と父親を殺害。その後、毒で自害…」
「…う………ひ…」
何も言葉を発せられないキオネは、目線を床に落ちた拳銃へと向ける。
「ムダ」
気づくと目の前には、自分を見下ろすカイルが立つ。
「…っ」
とっさにキオネは拳銃を拾い、カイルへと向けた。
…バンッ…!