愛しすぎて。短編集
沈黙の中着うたが流れる。
「あっ…ちょっとごめん。」
そう言って止まった俺と距離を取り電話に出た亜由紗。
かすかに聞こえる声に耳を澄ましている自分がいた。
「もしもし、今ちょっと電話できないからまた家帰ったらこっちから電話するよ。うん…うん。ばいばい。」
電話を切り駆け寄ってくる亜由紗と目が合い、俺から目を反らした。
「ごめんね…塾の友達からで。」
‘塾の’って聞いたらあの男しか浮かばないんですけど
「ふーん。」
あの男からの電話だから
俺の前では取れないの
彼氏といるって言わないの
…もしかして二股してんの
亜由紗の為に変われることは悪くないと思うけど
こんな風に情けない事を考えるダサい奴になんか
絶対変わりたくなんかない――――。