愛しすぎて。短編集
それから何日経っても
亜由紗からあの事についての言葉はなくて
ただすれ違う毎日が続く。
今日は久しぶりの二人での下校の日。
今日こそは
もし今日じゃなかったらもう…
今まで一体何度思っただろうか
結局できなかったのは――――
俺が亜由紗と離れたくなかったから。。。。
でも今日こそは絶対に
話をして別れるかどうかはっきりすることに決めたんだ。
いつも‘じゃあね’って分かれる場所に到着する。
「ねぇ…。」
先に口を開いたのは亜由紗だった。
「ん」
「キスして」
驚いた。
亜由紗の口から聞く初めての言葉
思い出すあの日の出来事。
亜由紗がキスしたいのは本当に俺なのか
亜由紗とどんな関係なのかわからないあの男がキスしたその唇に
俺がキスをするなんて
俺にはそんな事できないよ。
近づける顔に目を閉じる亜由紗
だけど俺は唇ではなく頬に口づけを落とした。
そして目を開けた亜由紗は
「別れよう。」
って悲しい笑顔でそう一言言って
振り向きもせず家へと一直線に帰って行った。