愛しすぎて。短編集
「お前…好きな奴できたんじゃなかったのかよ」
「何の事」
「だって俺から別れようって言った時『うん』の一言だけだったし、好きな奴がいるって聞いたから…。」
「…何それ。私のことそんな風に思ってたの
すぐに違う人を好きになるようなそんな奴だって…
私の気持ち馬鹿にしないでよ」
初めて聞いた律季の怒鳴り声と涙に驚き、掴んでいた腕を簡単に振りほどかれた。
両手で顔を覆って俺に背を向ける律季を暫く見ているしかできなかった。
「…ごめん。
男と仲良くしてる律季見る度にもう俺の事なんて何とも思ってないんだって…言われてるような気がしてたんだ。
あいつ…高原と特別仲良いし、ヤキモチ妬いてた。そんで律季が好きな奴いるらしいって高原に聞いたから、間違いないんじゃないかと思って……。
ほんとごめん。」
「……ヤキモチ妬いてたの」
「えっ」
「尚君と仲良いのにヤキモチ妬いてたの」
「…うん。
てか
…尚君て呼ぶなよ。」
「あははっ」
泣いていた律季が笑った。
と、同時に今自分が何を言ったのかに気付き顔が熱くなる。
「笑うな。」
赤くなりながら言うその姿は男らしさなんて微塵もなく、俺もおかしくなって一緒に笑った。