ホンモノノキミ
「最初に室井君と出会ったとき、別れ際に『今のは何もなかった事にするから、あたしには関わらないで』って言った事」
「あー、そんな事言ってましたね」
「そんな事じゃないっ、超大事だからっ」
「そんなムキにならなくたって…それに」
ムキになってたつもりではないけど、(無意識のうちにムキになって)手をブンブンと振っていた手がぱしっと止められる。
室井君の顔が真剣な顔になってて口を噤む。
何か、室井君の顔って、カッコかわいいみたいな顔してるから、何だか可愛いときと真剣なときの顔のギャップが大きすぎて、何も言えなくなってしまうんだ。
「実帆先輩がどんなに俺を振りほどこうとしても、俺は何回でも実帆先輩を捕まえに行くから」
「っ……」
「ていうか実帆先輩、俺に名前教えてる時点で少しでも進歩があったって事でしょ」
「……」
そう、不覚にも室井君があまりにもしつこすぎるから、つい名前を教えてしまったのだ。
丸くて、くっきりとしたラインのある二重の瞳があたしを捕らえる。
「俺、先輩の事好きです」
「っ……」
室井君の真っ直ぐな言葉が恥ずかしくて、下を俯いてしまう。
何で、こんなケツの青いがきんちょ(中学生)の言葉にこんなに恥ずかしがってんのよ。