ホンモノノキミ
「きゃぁっ」
「先輩可愛いっ!!」
チャリに跨いだまま、実帆の首に抱きついてきた陸に小さな悲鳴を上げる。
焦って、手に力を入れて押し返しても全然ビクともしない陸の体。
むしろ抱きしめられる力が更に強くなっていく。
中学生と言っても男。
離そうとしても、離れない。
「ちょっ、む、室井くんっ…」
「ヤバイっ先輩可愛すぎるっ」
「は……はずかしぃよ…」
「あー連れて帰りたい…」
何を言ってるんだコイツっ
中学生が高校生を連れ去るっておかしいでしょっ…
ツッコミいれどころ満載だけど、陸の「可愛い」連呼にだんだん恥ずかしすぎて、無言になっていく。
気が済むまで抱きしめたのか、ぱっと腕の力をはずして実帆の顔を覗き込もうとした瞬間。
「室井君のバカっ!!」
だっと迅速で走って消えてった実帆。
その後姿を見て陸はクスクスと笑う。
「っ…ほんとに可愛い…」
耳まで真っ赤に染めた実帆に、陸の顔は嬉しそうなものになる。