ホンモノノキミ



信じられないっ…


あんな人前で…公共の面前で…




「抱きしめ合ってたね」


「合ってないわよっ!!」




「ひゅ~怖い、怖い」とニヤニヤした顔で、あたしの顔を見る智美を睨む。




室井君のせいであたしは今日どれだけの冷ややか視線を受けた事だろうっ…




「う゛ぅ」と呻きながら机にゴンッと頭を倒す。


そんなあたしを智美はのうのうとパンをかじりながら見下ろす。




「でもさ、意外だったー海先輩に落ちなかった無敵の鋼女が、年下の中学生に落ちたのはー」


「落ちてないっ…ていうか、何そのあだ名っぽいの!!」


「えー有名だよ?実帆が海先輩のこと好きにならなかった事」




智美のその言葉にピタッと体が固まる。


ばっと体を起こし、智美をじっと見る。




「ちょっと待って。何であたしが板倉先輩を好きじゃないことが有名なの?」


「だってーそりゃ、卒業式に1人だけ泣いてなかったの実帆だけだったから、案外浮いてたんだよ?桜並木の見送りだって1人だけ皆と外れて木の下にいたし」




「知らなかったの?」パンを片手に持って、片手でお茶を飲む智美の顔を驚いたような顔で見る。




うそ…バレバレだったんだ…


まぁ、桜並木のことは明らかだったし…



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