ホンモノノキミ




『キャーっ』




桜が舞い散る卒業式。


学校から出て行く卒業生を見送る場面に『キャーっ』はないだろう。


しかし、それは仕方のない事。


なんたって学校のアイドルが去っていくんだから。


板倉 海(イタクラ カイ)


この人が女の子の目を奪う学校のアイドル。


そして今、この学校から去っていく人。


はっきり言って、あの人が居なくなればこの学校の男のレベルは一気に下がるだろう。




校門まで続く桜並木を歩く卒業生のために(主に板倉先輩のために)涙を流し、悲鳴を上げながら見送る女子の在校生。


みんな板倉先輩に触れようと前のめりになっているが、あたしは逆に後ろの方の桜に寄りかかる。


女子達が今、戦闘中ならばあたしは休戦中だ。




「はぁ…顔立ち良けりゃ何でもいいって訳じゃないでしょ」




誰に投げかけたのか分からない呟きは宙を舞う。


確かに板倉先輩は顔が絶世の美男子と言いたいくらい綺麗な顔をしている。


でも、あたしにはあのキラッとした感じの笑った顔がいまいち好きになれない。


何か、作りものに見えてヤダ。



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