ホンモノノキミ
「面白いもん見せてもらったよ、じゃぁな陸。実帆ちゃん、また会おうね」
「会わなくていいから、さっさと帰れ」
陸のブチ切れに口元を押さえながら、帰っていく板倉先輩。
その後姿をただ呆然と見るあたし。
板倉先輩の本当の顔を見てしまったよ…智美…
「実帆先輩」
室井君の声にハッと我に返り、室井君の顔を見ようと体の方向を変えようとした瞬間。
「ひゃっ…」
「好きです。」
肩からギュッと抱きしめられると同時に頭上から聞こえてくる、真っ直ぐな気持ちにやっぱり恥ずかしくなる自分がいる。
「先輩は…?」
「へ…」
「俺、先輩の気持ちが聞きたい」
ぐっと体から離され肩に手を置かれて真剣な顔で見てきた室井君に、さっきの智美の言葉が頭を駆け巡る。
「あたしは……」
『年下君の笑顔がずっと傍にあるって保障はないんだからね』
居なくなったら、やだ
室井君の笑顔が
「室井君の笑った顔が好き」
「…先輩、それどう受け止めたらいいんですか…」
あたしの言ったことに眉を寄せる室井君に焦って、違う言葉を考える。
「えっ、あ、うん…だからね」
どうしよぅ…
これじゃあ、確かに意味分からないよね
ん゛ー…だから…
「あっ」
「え?」
「いや…何でもない」