ホンモノノキミ
一度言いかけたことを引っ込めた実帆に更に眉間に皺を寄せる。
「先輩、そろそろ言わないと怒りますよ?」
「えっ…あっと、だからねっ…」
陸の急かすような言葉に下を俯きながら、色々と自分の感情を言葉に表そうと頑張る。
室井君の笑顔が居なくなったら、「嫌」なんだから…
つまり…
「室井君の笑顔をずっと傍で見ていたいです…」
「……ん。何かちょっとズレてるけど、嬉しい。」
上を見上げればニッコリ笑うあのホンモノの笑顔。
周りは暗闇の筈なのに眩しく思えるほど温かく感じられるその顔。
ついキュンとしてしまうその顔。
何だか照れてしまい、また下を俯く。
そして
「……好き」
ボソリと呟いたその言葉はしっかり陸の耳に入っていて。
初めての実帆からの「好き」にカッコかわいい顔を真っ赤に染める。
「わ、…可愛いっ先輩っ!!」
そう言って抱きついてきた彼には、もう「欲しい」という感情以外しかなかった。
もしかしたら出会ったときから
キミのホンモノの笑顔を見たときから
あたしの新しい恋は始まっていたのかもしれない
-----気付いたら芽生えていた恋花-----
「そう言えばさ、いつからあたしの事好きだったの」
「……」
「ねぇ、いつなのっ?」
「……一目惚れです…」
(道に迷い茂みから出てきて出会った少女に一目惚れ)
*END*