ホンモノノキミ
茂みから、葉っぱを被った男の子に固まる。
誰…この子…
あ、学ラン着てる、って事は中学生か。
卒業式は随分前に終わってるのに何でここにいるんだろう?
実帆が目を逸らさないでじっと見ていると。
「あー…えっと、俺と付き合ってください」
「……え?」
ニッコリと葉っぱを被りながら笑う男の子が喋った言葉に開いた口がふさがらない。
ハッと我に返り直ぐに、冷静さを取り戻す。
「……あたし、キミのこと知らないんだけど」
「じゃぁこれから知ってください」
「は……?」
「俺は室井 陸です。先輩の名前は?」
先輩?
いつ、あたしがアンタの先輩になったのよ
実帆は男の子の顔をひと睨みして。
「やだ」
「え」
「あたしは見ず知らずの人に個人情報を漏らすほど馬鹿じゃないの」
「さぁ、帰った帰った」と手であしらいながら、男の子に背を向ける。
これでは、何だか男の子が可哀想だしあたしも後味が悪いから、後ろにいるであろう男の子に最後に一言。
「今のは何もなかった事にするから、あたしには関わらないでね」
そう言って、桜並木を後にした。