ホンモノノキミ
「実帆ぉー海先輩がぁーー」
「はぁ…そんなに泣く事ないでしょ」
「…泣くのが普通でしょ。きっとこの学校の女子で泣いてないのはあんただけよ」
「そんな馬鹿な…」
と言ったが、実際そう。
卒業生が居なくなって、後片付けをしてる間、何処に行ってもハンカチを持って啜り泣きしている女子ばかり。
むしろ、泣いてないとおかしいんじゃないというぐらい。
まぁ、みんな海先輩の事で頭がいっぱいだからそんな事考える人はいなかったけど。
放課後、まだ泣き止まない友達の智美が泣き止むのを待つ実帆。
泣いてる智美をよそに、頭は違う事を考える。
さっきの陸と言った男の子。
あの子の笑った顔がやけに頭に残っている。
自分から関わるなって言ったくせに何、思い出してんだろう。
「実ー帆」
「あ、泣き止んだ?」
「随分前に泣き止んでたわよ」
「嘘付け」
智美の目が真っ赤なことに笑ってしまう。
そんなあたしに怒ったのかフンッと顔を横に逸らす。
「ごめんごめん。面白かっただけ」
「友達の失恋の涙を笑うなんて、最低っ」
「え…何、好きだったの?」
「好きだったわよっ…ったく…海先輩を好きにならないあんたの気が知れないわ」
智美の最後に言った言葉は軽くスルーする。
智美が泣き止んだ事だし、バックを持ち立ち上がる。