ホンモノノキミ
結局、昨日は智美につき合わされカラオケで四時間ぶっ通し。
「おかげで喉がらがら…」
「あ゛ぁ」と声を出しながら、玄関を出ると信じられない光景が映っていた。
「な、……何で?」
「おはようございますっ先輩っ」
ニッコリと笑いながら、学ランの少年に口をぱくぱくさせる。
その顔は昨日桜並木の茂みで見た男の子。
「何であたしの家知ってるのよ?!」
「まぁ、いろいろ」
曖昧にすんなよ、そこ。
それよりも、この子が何でここに居るのか意味が分からない
唖然としていると、男の子は急かすような口調で。
「先輩、急がないと遅刻しますよ?」
そう言いながら、乗っている自転車の後ろを叩く。
「…乗れって意味?」
「はい」
真っ直ぐなお誘いにちょっとだけ、ほんのちょっとだけドキッとしてしまった。