ホンモノノキミ
「実帆先輩っ」
「……はぁー…」
「先輩。悩み事ですか?」
目の前まで駆け寄ってきて、首を傾げながらあたしの顔を覗きこんでくるこの顔。
可愛いけど、ムカツク。
「キミだよ。キミ」
「俺ですか?俺のことで悩んでるんですかっ?」
「悪い方でね」
「ショーック」
変なツッコミをするこの男の子こそ、今あたしを最大に悩ませている、室井 陸君。
あたしに嫌なくらい毎日のように猛烈アタックしてくる変人。
「キミさ…」
「陸です」
「室井君さー」
「はぁ…」
いや、そんな聞こえるほどの溜息出さなくても。
ていうか、あたしは好きな人しか名前で呼ばないって決めてるの。
ガックリしている室井君を無視する。
こんなのがここ2、3週間ずっと続いている。
そろそろ、諦めてもらわなくては精神的に疲れそうだ。
「覚えてる?あたしが最初に言った事」
「何がですか」
きょとんとした顔であたしの顔を見る室井君。