幸せをあつめて
 
『‥大丈夫?』
「…ううん。なんでもないの」

冷たい風が吹いた。
髪が頬にやさしくあたる。遠くの山に日が沈んでいく。
こうして日常は繰り返される。途切れることなく。

「そろそろ部屋に戻ろうか」
姉さんは笑っていた。
悲しそうな、寂しそうな笑顔。

いつのまにか、空は暗くなっていた。
姉さんは僕の肩にも毛布をかける。
暖かくてやわらかい手のひらが僕の手に触れた。

「手、冷たいじゃない。風邪、引かないように気をつけてね」
姉さんは微笑んでいた。
さっきとは少し違う笑顔。
優しくて、やわらかくて、心が温まる笑顔だった。

(終わり)
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