偽りロマンチカ
でも
目の前の十字路を二つの傘を寄せながら歩く2人の男女が通り過ぎる。
その姿をどうしても目で追ってしまうあたしは、どうしようもないヤツなのかもしれない。
それでもいい。
「ありがとう。でも、それでもいいの…」
そう言って消えていくふたつの後ろ姿を追う。
後ろで友達があたしの名前を呼ぶ声が聞こえたけど、あたしの足が止まることはなかった。
十字路を右に曲がると、コンビニがあった。
コンビニの自転車置き場で追っていた二人が見えた。
咄嗟に駐車している車の影に隠れて、二人の近くに寄る。
すると、彼の掠れるような声が耳に入る。
「絵里…俺のこと、騙してたわけ…?」
え……?