偽りロマンチカ
少し間があいてから
「あたしね、航平の事、好きじゃなかったのかもしれない…」
雨の音が耳に入る情報を妨害していたけど、彼と彼女会話はよく聞こえた。
彼女の絵里さんが言った言葉にあたしの体は固まる。
「何だよっ…だったら最初っから俺と付き合うなよっ」
「…ごめん…」
昂ぶった感情を激しく撒き散らす彼に、絵里さんは悲しげに呟く。
絵里さんは彼と目を合わせないように横を通り過ぎていくが、それを彼の手が制止する。
「待てよっ…」
「っ…もぅ終わったのっ、もう航平の事は好きじゃないのっ…」
咎めた彼の手を絵里さんは思いっきり振りほどき、肩を揺らしながら伏せ目がちに一言。