偽りロマンチカ
朱里と出逢ったのは、元カノの絵里と別れた直ぐ。
絵里にフラれて何もかもが嫌になって雨に打たれて突っ立っていたら、ひょっこりと駐車してある車の陰から出てきた朱里。
朱里は傘を握り締めながら真っ直ぐ俺を見据えて
「奥村君。あたしと付き合ってください」
揺ぎ無い瞳でそう言った。
もしかして今の現場を見てたのかもしれない。
別に自分を自讃する訳ではないけど、絵里が彼女になるまではしつこいぐらいに呼び出しされる毎日。
断っても、キスしてくれたら諦めるとか言ってしつこく纏わりつく女ばかり。
ほとんどが顔だけ見て一目惚れした女ばかり。
どうせ、コイツも一緒か。
どうせ絵里と別れたばかりのフリーの俺をチャンスとでも思ったんだろう。
絵里と別れたばかりの俺は無償に気が立っていたのか多分誰から見ても酷いくらい冷たい笑みを浮かべて朱里に言った。