偽りロマンチカ
取りあえず、近くの空き教室に入る。
「…で、いきなり何の用なわけ…」
俺はじとっとした視線で絵里を見る。
そこにもう感情なんて可愛いものなどない。
そんな俺に気付かず、ぽつりぽつりと少しずつ喋り始める絵里。
「航平…あの……彼女さんとは、どう?」
「…そんなの絵里が聞いてどうすんの」
「だ…だよね…」
指をいじりながらどんどん声が小さくなっていく絵里にだんだんイライラしてくる。
朱里…教室にもう戻ってるかな…
はっきり喋らない絵里に痺れをきらし
「絵里。俺、朱里待たせてるから」
そう言って踵を返し、ドアの方へと足を進めようと思ったが、それは絵里の大きな声で遮られる。