偽りロマンチカ
ぽんっと頭の上にこの一ヶ月間、ずっと繋いでいた暖かくて大きい手が置かれる。
流れて止まらない涙を服の袖で拭き取りながら、その手にどことなく安心させられてしまう。
でもそれと同時に哀しみが込み上げる。
この手ともあともうちょっとでおさらばなんだから
そんな事を思いながら俯いたまんま涙を拭っていると不意に上から寂しげな声が落ちる。
「ごめん……」
「……」
それは、なんの「ごめん」?
変な同情なんかしないで
別に航平が「偽り」のキモチで接しているのを気付いていながら付き合い続けてたあたしがいけないんだから。
だから
「謝らないでよ…あたしが全部いけないんだから…」
だから
「もう、全部終わりにしようと思うの」