偽りロマンチカ



そう1回区切ると航平はあたしの頭の後ろに腕を回して、そのまま自分の方へと引き寄せる。


自然と航平の胸に顔がぽすんと当たる。


航平の匂いと温もりでいっぱいになる。


そして、航平は朱里の耳にそっと口を寄せる。




「でも今は、朱里だけしか考えられないよ」




そう甘い囁きが落とされる。




あぁ……




あたしは今どんな顔をしているんだろう




すっと肩を掴んで、少し体を離す。


航平は朱里の顔を見てふっと笑う。




「本当に泣いてばっかり」


「う゛っ……だれのせいなのよぉー…う゛ぅっ」


「あーごめんごめん、全部俺のせいだね」




そう言いながらまた引き寄せられてよしよしと抱き締められている片方の手で、まるで小さい子供をあやすかのように朱里の頭を撫でる。



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